「方言の聞こえなくなった夏休み」森本雍子
皆さまお元気でしょうか?夏休みは宮崎に帰省される方々も多いことでしょう。この8月はお盆と夏休みとが重なり、「故郷に思いを馳せる」お気持ちが強いことでしょう。 “ようこそみやざきへ”おかえりなさい
この時期にいつも手に取る愛読書があります。その本は「赤い鳥居」というタイトルで昭和41年から53年の12年間宮崎市長を歴任された、清山芳雄さんの執筆されたものです。
宮崎市のご出身でなくても、現在のイオンから東の松原にある赤い鳥居の神社を思い浮かべられる方もおいででしょう。
「赤い鳥居」とは一ッ葉稲荷神社の鳥居のことです。少し、書き出しを御紹介したいと思います。
緑の松を背景に朱塗りの鳥居の色合いはよく調和されてまことに美しかった。子供心にも松原の中にある一ッ葉神社の鳥居がすばらしく綺麗なものに思えた。
このエッセィ集は清山芳雄さんの子供時代の遊び、食べ物、虫や魚、木の実、小さな川や小さな橋などが温かく素朴に描かれている。
末尾に宮崎の方言(みやざきと言っても、そう広くない範囲の早期水稲地帯。檍地区一帯)が記されている。
農家の義理がたい主婦が墓参に行く途中に知り合いの主婦に道で会った。
「どき、いきなるか。」「15日じゃかり墓に、めってくともちよ」「え、
そうかの、まあ、えれいいハナシバがあったなあ。」「ハナシバがのしてなああんたやっとみつけたが」 原文のまま 後略
ここでの15日は7月のお盆を指しているのではなかろうか?この地区の方に伺ったが昔は8月にお盆をしていたが、早期水稲の稲刈り時期の8月は繁忙期となり7月に盂蘭盆ということらしい。
少し前までは、親戚縁者が寄り集まると方言が飛び交ったものであった。方言の持つなんとも言えない柔らかな土臭さとでも言おうか。今では懐かしく、少しさびしい気もする。方言も皆で使い次世代に引き継ぎたいものである。
森本 雍子
1939年 旧満州国生まれ 県立宮崎大宮高校卒 現在くらしのデザイン研究所主宰
1993年 宮崎市役所退職 同年株式会社宮交シティ勤務 1996年退職
1996年以降 宮崎公立大学就職カウンセラー、宮崎県森林審議会、宮崎県公共事業評価委員の他、日本銀行金融広報アドバイザー、財務省財務行政モニターなど
2004年 金融庁長官・日銀総裁から金融知識普及の功績で表彰
2007年―2013/3月まで「雍子と由紀子見たまま感じたまま」MRTラジオ
現在、みやざきエッセィスト・クラブ会員 日本エッセィスト・クラブ会員 宮崎文化を考える懇談会委員 宮崎市芸術文化連盟理事 文化振興協会理事