「平賀春郊先生」伊藤 一彦

「平賀春郊先生」伊藤 一彦

 国民的歌人の若山牧水は言うまでもなく宮崎県の出身である。「幾山河」や「白鳥は」の歌は、特に文学に関心を持たない人にも親しまれている。

 その牧水が歌人として大成するのに大きな貢献をした人物が幾人かいる。その中で平賀春郊の名は絶対にはずすことができない。牧水の若いときから影響を与え、二人の友情は長くつづいた。といっても、平賀春郊の名を知っている人は今は少ないような気がする。平賀春郊は旧制宮崎中学校に勤めたことがある。

 春郊と牧水は旧制延岡中学校で同級生だった。長嶺宏著『若山牧水』に、春郊は詩歌・文章にすぐれ、学校の成績もよく、鷹揚な人となりは、級友から尊敬されていたと書かれている。文学の情熱に燃えていた牧水は早稲田に行き、春郊は七高を経て東大に進んだ。牧水が恋の悩みを最も打ち明けたのも春郊だった。牧水が春郊にあてた書簡はなんと264通である。春郊はそれらを大切に保存していた。いまその書簡は東京在住の、春郊の孫で宮崎大宮高校第8回卒業の平賀(佐々木)徹さんが所持している。日向市の若山牧水記念文学館では春郊の書簡集を出版している。

 春郊は旧制の山口高校や松江高校などで教授として国文学を教えたが、宮崎中学でも教壇に立っている。「同窓会会員名簿」によると、大正5年から8年、昭和17年から21年である。平賀先生を憶えている卒業生は多い。

 今年は牧水生誕130年、日向市では6月27日(土)に記念の朗読オペラなどを計画している。あわせて春郊の業績も顕彰する機会になればと思う。

伊藤 一彦

宮崎県宮崎市生まれ、在住。宮崎県立宮崎大宮高等学校、早稲田大学第一文学部哲学科卒業。学生時代に同級の福島泰樹のすすめで短歌をはじめ、「早稲田大学短歌会」に入会。三枝昂之らと知り合う。 大学卒業後は帰郷し、教員のかたわら作歌活動を続ける。郷土の歌人若山牧水の研究者でもあり、若山牧水記念文学館長、「牧水研究会」会長を務める。同会が編集する『牧水研究』の第8号は2011年に第9回前川佐美雄賞を受賞した。 1996年、歌集『海号の歌』で第47回読売文学賞詩歌俳句賞。2005年、歌集『新月の蜜』で第10回寺山修司短歌賞。2008年、歌集『微笑の空』で第42回迢空賞を受賞。2010年、歌集『月の夜声』で第21回斎藤茂吉短歌文学賞を受賞。2009年より読売文学賞選考委員。 堺雅人は宮崎県立宮崎南高等学校での教え子。堺は牧水を愛読するなど文学的に多大な影響を伊藤から受けており、現在も恩師と慕っているという。2010年には共著『ぼく、牧水! 歌人に学ぶ「まろび」の美学』を刊行した。