早稲田大学鎌田総長へインタビューを行いました。

早稲田大学鎌田総長へインタビューを行いました。

平成27年7月11日(土)に開催された「早稲田大学地域交流フォーラムin宮崎」で来県された早稲田大学鎌田薫総長に、弦月同窓会谷口善雅副会長(第28回卒)がインタビューを行いましたので、以下をご覧下さい。

【ご質問1】現在、早稲田大学に進学する生徒の約7割が関東圏(1都6県)から進学していると聞きました。この現状について、いかがお考えでしょうか?
また、地方から進学する生徒を増やすにはどのようにすればよいかお聞かせください。

【ご回答1】
早稲田大学は、創立以来、全国各地から色々な個性を持った生徒が集まって、多様な個性がぶつかりあう中で、人間力が磨かれる大学であることを最大の特色としてきました。教室で学んだこと以外で優れた能力を発揮することで高い評価を受ける卒業生を数多く輩出してきたこと、これが早稲田の良き伝統だと言えます。
早稲田で学んだ卒業生が、郷里に帰るだけでなく、全国に散らばって、使命感をもって全国の教育界や財界、政界などで活躍をしてきたのも、早稲田の伝統です。
現在は、地方から早稲田に入学する生徒が減っています。原因は色々あると思いますが、主な要因としましては、首都圏に比べて地方は過疎化が早く進行しており、高校の生徒数が首都圏に比べて圧倒的に少ないことがあると思います。また、入学者選抜が知識優先・試験技術優先になっていることもあるかもしれません。そのほか、一人っ子が多く、親御さんがなかなか手許から放さないという現状もあるかと思いますし、それ以上に、親御さんの経済的な負担も挙げられます。
大学として、過疎化についてはなかなか対処できませんが、親御さんの経済的な負担については、なるべくその負担を軽減していきたいと考えています。早稲田大学では首都圏以外の受験生を対象に「めざせ!都の西北奨学金」という入学前予約型奨学金を2009年度入試から他大学に先駆けていち早く導入しています。採用候補者数は1,200名という圧倒的な規模となっており、4年間継続給付であるため、学費に充てれば国立大学とほぼ同程度の学費負担で早稲田大学に通うことができます。その他の奨学金も大変充実しており、奨学金制度(経済支援)については全国でもトップクラスの充実度を誇っています。他にも生活支援については、昨年、中野に国際学生寮(WISH)という900名弱の学生を収容できる大規模な国際学生寮を新設しました。
また、入学者選抜については多様化を図り、ペーパーテストだけではなく、他の能力もしっかり見たいと考えています。マークシート式の試験では、首都圏の中高一貫校などで受験対策の勉強をしてきた生徒の方が強く、地方で伸び伸びと過ごしてきた生徒の方が弱いという面があります。我々はそのような結果を期待している訳ではなく、色々な能力を見たいという思いがあります。ペーパーテストに関して言えば、何月何日に早稲田大学に来て試験を受けなければならないということは、リスクを孕んでいると思います。例えば、その日に大雪などの影響で試験を受けられなかった場合は、1年間浪人しなければならないという可能性もあるからです。また、宮崎から試験を受ける場合は、東京まで飛行機で行かなければならず、経済的な負担も大きいです。これからは、プロ野球のスカウトのように、「早稲田が育てたい」という生徒を大学側から獲得しに行く形が理想形であり、この形に少しでも近づけるよう更なる入学者選抜の多様化を図っていきたいと考えています。
ペーパーテストの技術だけを身につけるのではなく、伸び伸びと自分の個性を伸ばしてもらって自分の潜在的能力を存分に発揮してもらい、大学に入ってさらに伸ばしてもらうことを可能にする入学者選抜制度を考えています。
私自身も、親が転勤族で、静岡県で生まれ、小学校高学年と中学時は山口県で過ごしました。東京に来た当初は相当なカルチャーショックを受けました。それから東京の高校を出たのですが、早稲田大学に入学した時は、もっと大きなカルチャーショックを受けました。こんなに個性豊かな人が沢山いる大学なのかとある種の感動を覚えました。
これは、地方創生にも繋がることだと思いますが、地元だけにいるよりも、東京だからこそ学べることは多いと思いますし、東京(早稲田大学)で学んだ経験が地元に新しい刺激を与え、飛躍的発展をもたらすことができると思います。そういう早稲田の魅力を発信していくことで、早稲田大学にチャレンジしてみようという地方の生徒を増やしていきたいと思います。

【ご質問2】ひところ、指定校推薦で入学した生徒は、大学の授業についていけないのではないかと言われていたり、大学で補習を行っているという話も聞いたことがあります。
そのような面では、基礎的な学力はもちろん必要で、そこをクリアした学生を地方から選抜するということでしょうか?

【ご回答2】
学生をどのような指標で評価するかは難しいのですが、大学在学中の成績、今でいうGPAですと、早稲田大学の学部全体での平均点を見ると、最も成績が良いのはAO入試で入学した生徒です。次に良いのが指定校推薦で入学した生徒で、一般入試で入学した生徒はそれよりも低い結果となっています。
早稲田大学の指定校推薦は、成績要件を厳しくしていますので、高校3年間、真面目にきちんとやってきた生徒でないと応募できない訳ですから、そのような生徒は大学でも着実に学んでいくので、GPA値は高いです。ただし、傾向として大人しいという面はあるかもしれません。
我々が入学してもらいたいと思った生徒ですので、指定校推薦で入ったからと言って、決して引け目を感じる必要は全くありません。1日だけのペーパーテストで我々が評価した生徒よりも、むしろ高校の先生が3年間を評価して、「この生徒は大丈夫だ」と推薦されてきた生徒の方が信頼度は高いと言うこともできます。ですから、自信をもって入学して頂きたいと思います。

【ご質問3】早稲田大学へ行きたいと考えている高校生に、具体的にどのような勉強をすれば良いかアドバイスを頂きたいと思います。

【ご回答3】
入試制度の状況は刻々と変わっていまして、一概には言えませんが、かつては3教科の試験であれば、その3教科のみに集中しなければ合格できないと言われていました。しかし、現在は国立大学向けの勉強で合格できないということはありません。国立型の勉強をして、しっかり基礎的学力を身につけていれば、確実に合格できます。それから、早稲田大学にはセンター試験の成績でチャレンジできる学部が13学部中9学部もあり、これらの学部は東京まで行かなくても地元で受験が可能ですし、早稲田向けに特別な試験勉強をするということを意識することなく、高校で着実に勉強していれば、対応できると思います。
早稲田大学には、3教科型の一般入試、5教科型のセンター試験利用入試、指定校推薦入試、AO型入試、自己推薦入試などの様々な入試制度がありますので、自身の得意な方式で受験をしていただきたいと思います。

【ご質問4】指定校推薦枠について、宮崎大宮高校もいくつか頂いておりますが、これは先輩たちが成績優秀であれば頂けるという制度でしょうか?

【ご回答4】
大前提として、入学者の選抜は学部ごとに決めているため、大学全体でどうこうという話はできませんが、一般的な話をすると、大学側で選抜試験をする代わりに、高校を信頼して高校に選抜をお任せする訳ですから、信頼のおける高校に指定校推薦を依頼するということになるかと思います。
指定校推薦制度は、高校の本来の勉強をやっていれば入学できるという長所がある一方、短所は本人の成績だけではなく、先輩の入学試験や入学後の成績等によって影響を受ける可能性もあることです。
ただし、指定校推薦制度以外にも、早稲田大学にはAO型入試や自己推薦入試があります。他大学でも、例えば、慶應義塾大学さんでは法学部でFIT入試という個人にチャレンジさせ、個人の能力とともに地域性にも着目している制度があります。また、早稲田大学の社会科学部の自己推薦入試は、本人の個性と地域性の両面を重視しています。国立大学でも推薦入試やAO入試を重視する動きがあります。
第一志望の大学に入れなかったから、この大学に入りましたという学生の中には、入学後の学習意欲が少ないと言いますか、モチベーションの低い学生も見受けられます。このような学生ではなく、ペーパーテストの学力は多少下かもしれないけど、本当にこの大学で学びたいという熱い想いを持った学生の方が、卒業する時には確実に成績は伸びているケースも多いので、国公私立を問わず、そうした学生を入学させるための入学者選抜制度の導入に熱心に取り組むようになっています。

【ご質問5】早稲田大学のAO入試に地域枠的なものはありますか? 慶應義塾大学のFIT入試では九州で10名などの地域枠がありますが、いかがでしょうか?

【ご回答5】
AO入試では現在のところありません。しかし、社会科学部の自己推薦入試では各都道府県から1名以上の合格者を出すことを目標としており、本人の個性と地域性の両面を重視しています。また、指定校推薦では必ず公平にどの県にも指定するようにしていますし、学部内において、県単位でのバランスを取るようにもしています。

【ご質問6】最後に鎌田総長より、これから早稲田大学進学を希望する宮崎大宮高校の在校生に一言、アドバイスをお願いします。

【ご回答6】
若山牧水は、宮崎県から早稲田大学に入学し、そこで北原白秋と出会い、お互いに大きく成長しました。自分の能力が一番大きく伸びる時期に、早稲田大学に入って、多様な個性や能力を持った人達と切磋琢磨する機会を持つことは、自分を伸ばす上で貴重なチャンスであると思います。
早稲田大学の現代的なニーズにあった教育環境は、どこにも負けないという自負があります。たとえば、外国人学生数は約5,000名、外国に留学する学生は年間3,300名と、いずれも日本一の数を誇っていますので、是非とも早稲田大学に入学して、わが国随一のグローバル教育環境を存分に活用し、自分を磨いてもらいたいと思います。早稲田大学は皆様のご入学を心からお待ちしております。

【鎌田総長のプロフィール】
■氏名:鎌田 薫(かまた かおる)氏
■現役職:早稲田大学第16代総長
■経歴:
【学歴/職歴】
1970年 早稲田大学法学部卒業
1972年 早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了
1975年 早稲田大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学
〇主な職歴
1973年 早稲田大学法学部助手
1978年 早稲田大学法学部助教授
1983年 早稲田大学法学部教授
2005年 早稲田大学大学院法務研究科長
2010年 早稲田大学総長

名称未設定
(左側:早稲田大学鎌田総長、右側:弦月同窓会谷口副会長)

 category:同窓会関連category:宮崎の動きcategory:新着情報 2015.08.31(月)
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