平成24年都城市立美術館に洋画家・鱸利彦(すずきとしひこ)の作品約80点が寄贈されました。鱸はこれまで宮崎県ゆかりの優れた洋画家として宮崎県文化賞を受賞するなどその実力を評価された一方、没後20年以上を経て大きく取り上げられる機会はほとんどありませんでした。都城市立美術館ではこの度の寄贈を契機に、鱸利彦の芸術を広く宮崎県内の人々に改めて認識してもらいたいという思いから、この展覧会を開催する運びとなりました。宮崎の風土の中で育ち明治から大正、昭和の時代を越えて自己の芸術を模索し続けた生涯を、故郷宮崎にて没後初めて振り返ります。
鱸利彦は明治27年(1894)千葉県に生れ、2歳で旧宮崎町に移り住みました。旧制宮崎県立宮崎中学校(現在の大宮高校)に入学し同校で水彩画に触れると、その才能を当時の宮崎県知事・有吉忠一に見出され、19歳で上京、東京美術学校西洋画科に進み藤島武二らのもとで指導を受けました。その後文部省美術展覧会(文展)、帝国美術院美術展覧会(帝展)等で度々入選を果たしました。学生時代を通じて百貨店の高島屋から奨学金を受け、美術学校卒業後、約25年間を高島屋に勤務し着物などの図案(デザイン)に従事します。図案から得た構図や装飾性はその後の制作に生かされ、また高島屋に関係した美術家との交流により、戦後は美術団体の二科会、一陽会に参加しました。
自然の風景を中心に描き、晩年まで個展を開催し作品を発表し続けた鱸利彦が、人生を通じて追求し続けたのは“写実”でした。明治期に築かれた洋画のあり方が次第に近代化してゆく美術界の動きの中で、彼は抽象的な画風にも幅広く展開しつつ、「日常の中の美しさ」「直ぐなる美しさ」を描きたいと願い続けました。作品には、そうした心が映し出された自然の雄大な表情と澄んだ光に溢れています。
今回、鱸利彦の青年期から晩年までの作品と資料約50点を中心に、師・藤島武二、一陽会のメンバー鈴木信太郎らの作品、高島屋意匠部の貴重な資料を加えた約80点を展示いたします。鱸のひたむきな画家人生と優れた作品の数々をご覧下さい。
■会 期:平成26年11月1日(土)~12月14日(目)
■休館 日:月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)
■主 催:都城市立美術館、BTVケーブルテレビ
■協 力:高島屋史料館
■展示内容:油絵約50点、資料約30点 合計約80点
■主な出品予定作家:鱸利彦、藤島武二、岡田三郎助、和田英作、高岡徳太郎、
鈴木信太郎、野間仁根ほか
■会 場:都城市立美術館
■入場料:【当日】一般800円、高大生600円、中学生以下無料 ※前売券は200円引。
11月3日(文化の日)は全員無料、
11月16日(都城市家庭の日)は小中高生同伴の保護者につき無料
■開会式:(内覧会)2014年10月31日(金)15:00~
■関連事業:ギャラリートーク:隔週日曜日14:00~(担当学芸員)